トーラム『うさお物語』

 

…そこは夜が明けることがなかった。

見上げると宝石を散りばめたような満天の星空。

しかし、暖かな熱を、降り注ぐ日差しを与える太陽が昇ることはない。

永遠に…。

 

f:id:aoi168:20170612233906j:image

 

黒き川跡。

ここが私の故郷だ。

夜の王が統べる闇の世界。

私はここで生まれ、そしてここで果てるのであろう。

そう思っていた。

彼女が訪れるまで。

 

彼女はふらりと、この夜の荒地にやってきた。

『テイマー』という職業柄、あらゆるモンスターを狩り、手懐ける術を持つ彼女は、一切の感情を失くしたかのような冷たい仮面のような顔をしていた。

この黒き川跡にも、ウサギを好んでペットにしたがる人間の依頼でやってきたのであろう。

多くの仲間…と言えるのかすらわからないが、同じ『ウサモナー種』が、手馴れた彼女のテイムによって、鉄製の檻に収められていく。

 

次は私の番か。

テイムされ檻に入れられ、人間に飼われるくらいならば…いっそ最後の抵抗をしてみるのも悪くない。

そう思った私は、『最期の戦闘』に向かうべく、彼女の前に降り立った。

 

彼女はしばらく私を見つめた後、手にしていた剣を背中に収め、こう切り出した。

 

『…キミには手荒な真似はしたくないな。どうだろう?私の元に来ないか?』

 

f:id:aoi168:20170612235909j:image

 

何故彼女が私にそのようなことを言ったのかわからない私は、

 

『何故だ?貴女の元にというのは?人間のペットにするために我々を捕獲しに来たのではないのか?』

 

と問いかけた。すると彼女は仮面の顔を崩し困ったような表情を見せ、

 

『キミとは戦いたくないんだ。どうだろう?私と一緒に冒険しないか?太陽が沈む時まで。』

 

そう言った彼女は、夕陽のようなその赤い瞳をほころばせ、ほんのわずかだが笑った。

 

私は、彼女と共に旅立つことにした。

この夜の荒地を出て、光溢れる太陽の世界へ。

 

f:id:aoi168:20170613001224j:image

これが私である。

これまで、名を呼ばれることがなかったので、遠い昔に自分の名前など忘れてしまったと彼女に言ったら、彼女が名前をくれた。

 

うさお。

 

これが私の新しい名前である。

名前にどんな意味があるのかはわからない。だが、彼女の元に既にいた他のモンスターも、『〇〇お』と呼ばれていたので、単に彼女が呼びやすい名前をつけているのであろう。

決して、『まんまじゃねーか!!』という彼女の友達のツッコミを期待しての命名ではない。

 

f:id:aoi168:20170613001636j:image

これが彼女…アオイである。

無表情というよりは、ちょっと逝っちゃったようなアブナイ空気を漂わせているが、寡黙でテイム熱心な冒険者である。

 

そんなアオイと共に、初めて見た太陽。

f:id:aoi168:20170613002418p:image

陽のあたる世界、初めての仲間。

何もかもが明るく、私の心にも光が射し込んだようだった。

この時までは。

 

ある日、アオイが

『ついてきて。』

と言うので、ある場所まで一緒に向かった。

不帰の奈落。

帰ることのできない奈落の底という意味なんだろうが、今では冒険者たちの手によって切り開かれ、ところどころ光の射す渓谷へと姿を変えていた。

こんなところで何をするんだ?と疑問に思っているの、アオイは奈落の奥…あの夜の荒地のように太陽の光が届かない狭い窪地へ入っていった。

そこに居たのは、ゆうに私の3倍はあるであろう大きな身体の巨木のようなモンスターだった。

 

『まさかこれをテイムするのか?』

 

その古びた木材のようなモンスターの前で尋ねると、

 

『これはテイムできないんだが、キミのレベルアップにはちょうど良さそうだから。』

 

と言い、有無を言わせず戦闘突入。

f:id:aoi168:20170613003754p:image

バーバというモンスターらしい。

その大きな体に比例してか、逃げ場がないほどの攻撃を仕掛けてくる。

私は彼女の背後につき、覚えたばかりのスキルを使い、懸命にアオイの手助けをした。

 

すると、みるみるうちに私のレベルが上がっていく。

アオイは、このためにこの場所へ連れてきてくれたんだな。

そんなアオイのために、早くレベルカンストして、役に立ちたい。

今はまだ無理だけど…私に『太陽』を見せてくれたアオイのために…。

私はそう心に誓い、今日もアオイと共に戦場へ赴くのであった。

 

f:id:aoi168:20170613004619p:image

 

うさお、20歳(ハタチ)。

 

 

 

 

 

うさおが眠りについた頃、アオイはぶつぶつと思考の海を泳いでいた。

『ペット合成のために、うさおを連れてきたけど、ちっとも成長せんやん!早くカンストさせて、見た目用に合成したいわー。』

 

うさお20歳。

合成用に捕獲されたことを、彼だけはまだ知らない………。

 

 

 

 

『ごぶお物語』

 

『ぷらんたん物語』